駐車場シェアリングサービス業界は、現在のところ、すべてにおいて“akippa”の寡占状態が続いていて、他の追従を許さない体制を築いています。これについては当方でもakippaの優位性を紹介する記事(駐車場シェアリングサービスは「akippa」の“一強多弱”で決着か。今後の駐車場シェアリングについて) などをご紹介しましたが、その差は広がりこそすれ、縮まる気配はなさそうです。
しかしその反面で、akippaのビジネスモデル自体に警鐘を鳴らす向きもあります。それはakippaの収益が一向に黒字化に向かう気配もない中で、MaaS化に力を入れると言うバランスの欠けた経営を続けていることで、これについても「akippaの深刻な業績赤字問題。順風満帆にみえる経営の陰にakippaが抱える事業の根幹に関わる諸問題とは」でご紹介しましたが、やはり心配の種ではあります。
akippa株式会社の公式発表の数値では4月15日現在で、会員数は120万人、駐車場拠点数は27,000ヵ所に急増しているにも関わらず、業績赤字の回復が見られないのですから、やはりビジネスモデルに問題があるという見方には真実味があるといえるかも知れません。
目次
akippaへの空きスペースの貸し出しは是か非か
そのような状況下ではありますが、駐車場新聞ではakippaについては、シェアリングエコノミーのリーディングカンパニーとしての位置づけについて高く評価していましたし、今後も評価はしながら、注意深く見守る姿勢には変わりはありません。
ただ最近ではakippaの収益性に対するご質問を多くいただくようになりました。そのご質問のほとんどがakippaへの空きスペースの提供に対する収益性…、平たく言えば“akippaって果たしてどれくらい儲かるのか”ということです。
これにはakippaだけでない、現在のECビジネスの問題も関係します。例えば楽天やアマゾン、ゾゾタウンなどポータルサイトはみんな同じですが、これらには、運営側だけが高い収益を手にして、参加するものには大したメリットがない状況がみられています。要はakippaもそれと同じではないのかという懸念があるということです。
akippaが浸透するにつれこれらに対する興味も増えているのか、ネットで検索してもそれに因んだ記事が多く見られます。多少なりとも参考にはなるでしょう。
徹底して調べた提供者別収益性の調査で意外な結果がみえてきた
そこで駐車場新聞では偽らざるところをご紹介すべく、現在掲載されている駐車スペースを徹底的に調査して、誰が、どれくらいの収益をあげているのかを、その収益モデルを通して体系的に調査しました。そこから判明したいくつかの“公式”をご紹介しましょう。因みに調査対象については未発表にしますが、調査地域は都市部~地方都市まで均等に選びました。また提供先もakippaと直接契約している大手企業~個人で登録している駐車スペースに至るまで公平に取り上げました。そこから見えてくる4つの実態についてお伝えしましょう。
圧倒的に強いのは「特別料金」収益の高い、東京、京都、大阪、イベントスタジアム
akippaで高い収益をあげる為には「1日あたりの金額」×「稼働日数」×「車室数」で高い数値がでればよいわけです。
中でも金額に大きな差がでるのが「1日辺りの金額」です。通常akippaでは“周辺より15~20%安く”設定されていて、基本的にはその安さが利用してもらう際の“売り”になっています。
しかし場所によっては、そもそも周辺価格自体が高いエリアであったり、近くにイベントスタジアムなどがあって、コンサートの時などは少々高くても安心して止められることが“売り”となります。さらにakippaでは「特別料金」を設定して、通常500~600円であっても、イベント時には3000円~4000円の設定に自動的に変わるシステムがありますので、これがあると一気に収益があがります。
したがって自然と収益率の高い場所は東京、大阪、京都などの大都市の超観光地や商業集積に近い場所、野球場(特にドームタイプ)やホールなど、イベントの多い施設に近い場所、となり金額的にも群を抜いているのですが、これなどは想定内となるでしょう。
akippaシステムの陳腐化の声も。長期需要に対応できず、機会ロスが目立つ「駅前物件」
akippaの予約システムは、基本的にあまり空きスペースの提供者に対する利便性の向上面では欠けている傾向は否めません。
今回の調査でよく聞かれたのは、駅前立地の提供者の方からのご不満で、「これだけ駅に近いのに稼働率が低い」というものでした。しかし同時に利用者側からも「予約システムがもう少し融通が利かないか」という不満もあり、akippaのシステムが陳腐化している現状も感じます。
例えば大阪市内の工務店が須磨に仕事を持ったとした場合、毎日車で大阪-須磨を往復するのには問題があります。須磨の駅前に車を止めておけば、電車で須磨まで行って駅前の車で仕事場に向かうというのが便利ですが、現時点ではakippaは予約日数が14日先か30日先までの予約可能日を設定できるだけで、さらに先の予約日を取るシステムが未だにありません。もしそのような設定が追加されれば空きスペースの提供者からすれば数カ月先の長期契約をとれるチャンスを逃すことになります。
akippaでは最近MaaSなどを視野に入れると言っていますが、こうした小さな利便性の積み重ねができないのであれば、看板倒れとなると言われても仕方がないかも知れません。
akippaの「営業努力不足」?ほぼ全滅状態の地方都市や郊外立地
その意味でもakippaは、多くの企業や個人から空きスペースを提供してもらって成り立っているにも関わらず、提供者が収益をあげるための広告や宣伝にはそれほど力をいれていないように感じます。
Web、SNSでは情報発信していますが、テレビCMなどは見たことがなく、沖縄や九州ではやっているようですが、あくまで自社のためのテストケースでもあり、個々の利用者の利用率をそれほど上げられてはいるようには感じられず土地提供者の役にはたっていません。
ですから地方都市や郊外立地の物件では、かなり高いウェイトでほぼ全滅状態であると言っても過言ではありません。月0~1000円までの売上げなど普通にありますから、報酬額としても月に1000円以内なども普通にあるのがその特徴です。
収益不足などで撤退が相次いでいても、「休止」扱い。意外と使える場所が少ない「提供箇所数27,000」
akippaの提供箇所数は27000ヵ所と発表されていますが、実際利用する場合、かなりの頻度で「この駐車場は現在休止している」と表示され、近くの駐車場が紹介されます。時には周辺にはなく、徒歩で1時間近くかかる場所が提示されることもあり、やっつけ仕事の感も否めません。なにより地域によっては“意外に使えない”と感じますが、そのような場所では当然、利用者もあてにしないので、収益率は上がりません。
よく検索される場所はakippaも把握しているでしょうから、そのような地域はもう少し積極的に駐車場提供を呼び掛けるとか用地の拡大は課題ではあると思います。
以上のようにakippaのビジネスモデルについては、まだまだ不安材料が残ります。特に空きスペースをご提供いただいている方への向き合い方に、現状のような差があっては、本業での成果は今後も絵に描いた餅になってしまう懸念があります。創業から本業が赤字を続ける中で、24億円の資本協力を受けると言う特殊な環境の中では無理をしても成果を追う必要があるのでしょうが。
皆が参加しないと盛り上がらないビジネスモデル。空きがあるならまず貸出を
少しakippaに対する渋めの記事になりましたが、それでも企業、個人を問わず、高い報酬を得ている提供者がいることは間違いはありません。
ただakippaに登録するだけで不労所得として、1車室で毎月20000円~30000円が手にできれば、企業であれば経営上の役にも役立ちますし、報酬が個人口座に振り込まれますので、自分のゴルフ代にあてることも可能です。
個人であれば、これだけの収益があれば、どれほど家計に役立つかは想像に難くないことでしょう。高い収益のチェックポイントとしては、その場所が駐車場利用の可能性があるかの判断ができ、あると判断できれば、それだけで試してみる価値はあります。
特にシェアリングサービスは利用する側も提供する側もいないと成立しないビジネスモデルなので、個人・事業所では、自分の持つスペースの価値を評価することをお勧めします。akippaの登録には費用もかかりませんし、訳あってやめることになっても契約違反だと言われることもありません。