コラム

MaaSが拓く未来社会の姿が見えてきた

MaaS

最近はどこにでもアルファベットの略語が使われていますが、その内容についてはニュアンスは分かるのですが、意味を正確に知ることはなかなか難しいようです。例えば“MaaS”という言葉が登場して長いのですが、いまだにその実態が広く知られているかと言えば、そうとは思えません。しかし、その間にも、我々一般庶民がその恩恵を受ける可能性は拡大しており、将来的にはこれとは無縁で生活することは不可能であるという段階に入っているようです。今日はそうした次世代概念とその実態についてご紹介したいと考えます。

トヨタが打ち出している“MSPF”の姿

トヨタは現在「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」を提唱しています。この場合のモビリティとは“自動車の”くらいの訳で良いでしょう。要するに、レンタカー会社やタクシー会社などおおよそ自動車と関係のある企業、事業者に対して、同社が開発したサービスのシステムを提供して、単なる業務協力環境だけでなく、事業管理や分析など個別の機能を利用してもらい生産性を向上していただくという考え方で、他業種ではすでに同様のサービスが始まっている分野も少なくなく、要はこうした流れは時代のそれであるということになるということでしょう。

これのなにが役にたつかという点についてはこう考えるのが妥当でしょう。トヨタが持つ自動車関連の知識や情報は、当然膨大で且つ正確なものであります。例えば自動車の購買に関わるビッグデーターや世界中の市場の反応や変化というような大きなものから、業務用自動車の維持管理や利用するための個別の機能開発などのような限定的なものまで様々あるでしょう。しかし、それがあってもこれまでは、例えば地方の小さなタクシー会社や運送会社、ましてや個人の利便性などに広く活用する方法もありませんでしたし、また利用する側にしても、それで得ることができる利益もかなり限定的でした。

しかしIT社会から超高度情報社会(Society5.0)への変化は、これまで末端であったり、小規模組織であったところにも、その情報を取り入れる仕組みを作り、また、そのことで得られる利益の質が根本的に変化する社会を構築することになりました。トヨタにとっては、そうした周辺サービスを各企業と連携することで未来型のビッグビジネスになり、利用する側にとっては、これまで自分達では利用できないと思われていたノウハウが社会が変化することで、大きな収益に繋がることのできる情報社会へ変貌したことを意味します。

このMSPFには、直接的なサービスだけでなく、間接的な専用通信機「DCM」(Data Communication Module)というサービスもあります。これは、全車両データを活用して、例えばテレマティクス保険など様々なサービス事業者との連携に活用していくようなもので、こうしたものは“情報サービス”を主にしたもので、まさにこれからの企業にとっては、主戦場となると言っても過言ではないでしょう。

駐車場業界と“MaaS”

駐車場業界でもこのところ聞かれる言葉ですが、これは「モビリティー・アズ・ア・サービス(Mobility as a Service)」のことです。その意味はまず、自動車を輸送や移動の手段と位置付けます。そしてそれらが円滑に利用できるように、提供側がより深いサービスを平行提供するということです。これまでの自動車が自動車という価値を所有財産としてきたのに反して、今後は自動車自体が移動の為のサービスを価値化することで、自動車文化そのものを仕組みとして見直す一大パラダイムの変化です。

例えばUberのようなライドシェアやクラウドを活用した新交通サービス、或いは駐車場シェアリングサービスなどがあげられますが、それ以外にも今後、発想次第でますますサービスは広がって行くでしょう。なぜならそれは自動車という核に対する周辺関連事業なので、その周辺は幅広く、あらゆるジャンルに枝葉を伸ばすことを考えれば、その事業範囲もまた、知恵ひとつで拡大してゆくからです。

世界で爆発的に広がる次の新発想“CASE”

モビリティサービスを強力に進めるのに必要なものの一つが、やはり“コンセプト”に基づいた研究開発であることは言を俟ちません。“なんでもある”というのは“なにもない”というのと等しいですので、我々が目指す計画には具体的な概念がなければなりません。そんな中、ドイツのダイムラー社が2016年に発表したのが
「CASE」で、これはひとつの自動車社会の未来を考えるのに明確なコンセプトとなりました。

CASEを説明すると、これからの社会で自動車業界が目指すべき姿を表したもので、それぞれConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)を意味します。これはフォードが自動車の大量生産を可能にしてから100年以上続いている自動車産業界に大規模なメタモルフォーゼとトランスフォームを起こしました。

今日、私たちは、MaaSの概念を知らなくても、また、CASEと聞いて、それを箱だと勘違いしても、それとはお構いなく誰もが、その恩恵を受ける社会になりました。今までは考えつかなかったような移動型施設や店舗が登場したり、カーシェアやライドシェアの概念がシステム化して、自動運転交通機関などに変化してゆくだけでなく、日常生活の行動情報から、極めて近い未来には総合サービスが低価格で享受できる世の中に変わってゆくことになります。

未来社会はすでに始まっている

“空飛ぶ自動車”とか“自動運転タクシー”などは、かなり未来のことだと感じているかも知れませんが、いずれも、そう遠くない未来に実現する現実です。
例えば自動運転についていえば、先のトヨタはJapan Taxiに75億円の出資を行いました。これまで保守的と言われてきたタクシー業界に突如、最先端技術が投入されることになりました。今後、ビッグデーターの共有分析や、AIを駆使した配車支援システムを含めた総合サービス業の確率、タクシー向けのコネクティッド端末の充実などが加速されるでしょうし、同じトヨタが出資したUberとの業務提携の中で、大規模な情報や端末自体の共有化でスケールの違ったレベルでのモータリゼーションが実現するのだと考えられます。

MaaSの概念が今後、数百倍の規模で市場と結びつくことになると、どのような変化が起こるか。いかに巨大に見えても、それはあまりに巨大なプラットフォームの欠片に過ぎないと考えられます。これからもこの巨大なビジョンを持った技術爆発からは目が離せません。

空きスペース、空き駐車場が出費額ゼロで収入になります!

ピックアップ記事一覧

新型コロナパンデミック 1

駐車場業界を大きく分けると、公と民間に区別でき、民間ではさらに月極と、コインパーキングなどに絞ることができます。現在、新型コロナに関する非常事態宣言下ではほとんどの経済活動が抑制されていますので辛抱の …

駐車場 2

ネット上でも多少の浸透してきたのか、我が「駐車場新聞」に、お問い合わせやご質問がよく届くようになりました。私たちが「駐車場新聞」を始めたのは、世間で言われていること、ネットで扱われていることは実は単な …

akippa(あきっぱ) 3

月極駐車場を運営していて一番気になるのは『稼働率・収益率』だとは思いますが、よっぽどの立地などでない限り30%などが普通ではないでしょうか。 駅前なら100%近い場合もあるかもですが、さらに空きを埋め …

4

相続した土地で駐車場をしようと考えていますが、月極駐車場とコインパーキングでは、所得税の扱いが違って来ると聞きます。どのような違いでしょうか。

5

駐車場シェアリングサービスがお小遣い稼ぎになると聞きますが、実態はどのようなものでしょうか?

6

唐突ですが、今アマゾンや楽天が膨大な売り上げをあげていることに疑問を挟む人はいません。 これらの通販サイトに出店している人も多く、活気にあふれている印象があります。 ではこうした通販サイトでどれだけの …

7

全国でコインパーキングの料金が急にあがっているとのご指摘や問い合わせが増えています。 この原因には都心部での駐車場の提供不足であるとか、地価の問題などそれっぽい理由がつけられていますが、とどのつまりは …

コインパーキング料金支払い 8

単純な疑問なのですが、時間貸しの駐車場というのはどのように算出されているのですか? あまり利用のされていない場所と、されているところとの差がないようで、不公平感があるのですが、何か明確な基準というのがあるのでしょうか?

9

大手駐車場運営会社から、昨年相続した空き地をコインパーキングにというような打診がありました。土地は、地方都市の郊外の国道から1本入ったところにあります。運営会社の話では車室10~12のコインパーキングで大変有望だと言われますが、それほど需要があるのか疑問です

街のコインパーキング 10

かつて日本の駅前にはパチンコ屋があって、これが景観を著しく破壊するという批判を受けていました。 だからといって移転する訳にも行かず、今ではけばけばしい外観を改めて防音もはかり、それとは気づかない存在に …

-コラム

© 2024 駐車場新聞