駐車場業界を大きく分けると、公と民間に区別でき、民間ではさらに月極と、コインパーキングなどに絞ることができます。現在、新型コロナに関する非常事態宣言下ではほとんどの経済活動が抑制されていますので辛抱の時期ですが、ここに大きな課題があります。もちろん、ひとくちに“駐車場経営”と言っても、様々なケースがあるので、一括りにすることはできませんが、もっとも一般的なものを前提に検証します。
ほんとうに回復基調に戻るのか
そのテーマは以下の2点です。
- 現在、駐車場経営されているオーナーの体力は持続できるのか
- 今後の駐車場市場は、回復基調にもどるのか
駐車場経営されているオーナーの体力は持続できるのか
①ではまず、月極駐車場などを個人で運営されている場合を考えてみましょう。もちろん月極ですし、契約中で解除する場合は1か月前の打診をうたっているので、容易に対応できるのですが、今のところ、契約解除が一気に増えたという状況は広がってはいないようです。ただ例外として、建築会社などの企業と期間契約をしていたのが、工事の見合わせでキャンセルとなったものは少なくありません。しかしこれも期間限定の落ち込みと見れば、それほど大きな問題ではありません。しかし自体が長期化することで状況が変わる事は充分にありえます。駐車場経営のパンチはボディブローのように徐々に効いてきますから、知らないうちに立ち直れない状態になることは充分考えられます。
コインパーキング業者と契約している場合はどうでしょうか。こちらは現在深刻ともいえる落ち込みが見られます。公の駐車場が閉鎖されていることで、一時的に利用が増えているという声も聞きますが、中期的にみて、これほど人の流れが阻害されていては、利用の伸ばしようがありません。事実、これまで満車が多かった民間のコインパーキングに見事に車がなくなっているのをみかけます。これが数カ月続けば、とても継続などできませんし、また契約を解除するにも多大な費用がかかるので、動きがとれない状態となるでしょう。しかし、コインパーキング業者がもっとも懸念するのは、このような状況下で今後、用地の提供契約が増えるか否かです。
或る業者の方に聞くと、苦しい胸のうちを打ち明けられます。「現状でコインパーキングに充分な利用客が戻ってくるのには、かなりの期間が必要だと思います。しかもその期間、現在、提供いただいているオーナーの収益は、例えばサブリースや一括借り上げの場合、約束されていて安定していると思われるのですが、契約の中に必ず“金額の一方的見直し”の規約が入っていますので、その時期がきたら値下げを通達しなければならなくなりますが、尋常な金額にはならなくなり、必ず反感を買うでしょう。そのような状況では、悪い評判がたち、その後、土地の提供者が増えるかどうかは…」と語尾を濁らせます。それでなくても、コインパーキング業者と契約したオーナーの多くは、ぎりぎりのところで収益の確保できていない方も少なくありませんから尚更です。
こちらの会社では、パンデミックが終息したら、必ず需要が再燃する。また、新型コロナの影響で多くの建築工事が中止となり、その土地がコインパーキングに廻って来るので今はチャンスだと説明するのだそうですが、この説明は完全に矛盾するので、とても信用できるものではありません。駐車場業を含む、不動産業界は基本的に顧客の多くは法律を充分知らないので、こうした勧誘もあるかと思いますが、いつまでも通用するものでもありません。
需要はパンデミック前の状態に回復するのか
②の問題となると、さらに厳しい見通しになります。確かに政府が非常事態宣言を出している期間に比べると、終息が確認され、街に人が戻るようになれば駐車場需要は回復します。しかし、問題はその回復基調が、2019年末くらいのレベルに戻るのか。或いは業界に対する期待度がそのレベルに達するのかという点です。
世界的なパンデミックが終息したとしても、新型コロナウィルス自体が完全に封じ込められることはありません。今回の型では早い場合は数時間で危篤状態になるというものですから、いきおい人々の動向も慎重にならざるを得ません。その場合、企業や人の導線は新型コロナ以前に戻る事は厳しく、別のマーケットが誕生することになると類推できます。
新しいマーケットがどのような顔を持つものであるのか。現状ではあまりに選択肢が多くて読むことが困難ではありますが、一例をあげると、新型コロナが武漢ウィルスというように、発症国である中国に対する評価が世界的に低迷し始めており、今後、中国がこれまでのような“世界の工場”の状態を、持続するのは困難との見方が濃厚です。となれば、インバウンドの代名詞であった中国人観光客の激減も予測されます。
またオリンピック東京2020が予定通り、来年夏までに開催されたとしても、オリンピック特需が2年に分散されるだけで、経済効果は半減以下となるのが予測されますし、中止となった場合の予測は怖くてできないでしょう。そしてこの2つが合わさっただけでも、日本の不動産業界を根底からパラダイム変革するだけの根拠となると言えます。
MaaSが形を変えて誕生する未来
しかし、危惧ばかりではありません。現状で期待されるのは、日本の不動産業界がこれまでの古い体質のまま存続してゆく未来から、あらたなプレイヤーとしてMaaSを推進する新たな業界とそのシェアを分割するような未来です。前者は不動産業界が不動産業者のためにあるこれまでの市場であり、後者は不動産業界を利用者の視点で構築する市場です。この市場には一長一短もありますが、利用者にとっては、選択肢のない現状よりは大きく成熟した市場を期待することができます。
新型コロナのパンデミックは、これまでの“何も決められない日本”からの脱却のチャンスでもあります。その意味でも駐車場新聞は、業界の動向を厳しくチェックしてゆきます。