社会の急速なIoT化、AI化が加速する中で、駐車場業界の立ち位置も大きく変わりつつあります。その変化は一口で言うと、これまでは様々な問題、課題があっても、不動産業界の範囲で調整できたものが、これからは、まったくの異業種や異なる技術革新で根本的に覆される可能性が極めて高くなるということです。これは、例えばシェアリングエコノミーのようなものではなく「MaaS Ver.2」以上への推移によるもので、技術革新にさほど熱心ではなかった不動産業界では、対応しきれない、深刻な問題となりつつあります。
しかし、この想定される変化は、こと利用者について言えば、問題の多い不動産業界よりも、むしろ有利となるので歓迎されることが予想され、その意味でも不動産業界には逆風となるでしょう。
解決にほど遠い日本の駐車場業界の持つ問題
長年、解決できない、或いはしようとしない駐車場に関わる問題は山積しています。これらの課題と処方箋について取り上げてみます。
1、駐車場業界全体の低モラルの問題
駐車場新聞でも取り上げましたが、長年「駐車場料金表示」の問題や、「駐車場づくりに対する法的不備、或いは法の無視問題」も一向に解消する傾向はみられません。
それどころか、近年は業界大手と言われる企業も、あの手この手で法律スレスレの行為をするところがあり、これ自体、業界のモラルの問題としか言いようがありません。
現状、不動産業界の範疇であれば、そんな無理も通ってきたかも知れませんが、新たに登場する企業や事業モデルに市場をごっそり持って行かれる可能性は極めて高いと言えます。
2、都市計画や市街地政策の再編に基づく環境の変化の問題
昨今の都市計画の再編により、これまでのような“美味しさ”は縮小される傾向にあります。
例えば新築ビルに関する条例では、これまでの駐車場の過大台数設置義務は緩和される傾向にありますし、逆に都市内の小規模な駐車場については市街地にブロック集約する規制が強化されています。
これなども、これまで野放図にされていた駐車場に当然の方向性が示されただけのことで、遅くに失した感すらあります。
3、新しい技術の台頭の問題
スマホを利用した駐車場予約システムも数年前のシェアリングサービスの域を超えて、多様化しています。
コインパーキングの積算方式に至っては、これまでの単体機単位のコインのみの積算方式から、集中精算機による複数車室精算だけでなく、コインからクレジットカードやスマホ活用まで可能となっています。
この仕組みは今は不動産業者の利用もありますが、やがて現状の大手企業の持つコインパーキングに使われている機器が自らの首を絞めることにも繋がってくることが想定されます。
これらの問題はあらたな事業参画者が現れた場合、対処の方法はありません。その上、人口の減少、少子高齢化が進み、自動車の保有台数が落ち込み、道路利用者が減少すれば、そもそもの分母が落ち込みますし、なにより、全国的に土地価格が深刻な低下傾向になっており、更なる影響が直撃することになるでしょう。
駐車場新聞にも問題意識の高い不動産業者やIT関連企業からの、ご意見やご相談が寄せられますが、その際、お答えしているのは、現在、多くの企業が開発に鎬を削っているMaasは、すぐにVer.2~3と進化してゆくことは間違いないこと。そして、日本の駐車場業界はそのパラダイムの変化すら、待ったなしの状態となっていることなどです。
これはどの時代でも同じですが、時代の潮流に柔軟に対応できる者が、次のステップに進めるのです。今は少なからずそのピッチが速いというのもあるかもしれませんが。