コラム

akippaの深刻な業績赤字問題。順風満帆にみえる経営の陰にakippaが抱える事業の根幹に関わる諸問題とは

赤字

予約して安く駐車場を借りることができることで話題の駐車場シェアリングサービス界のリーディングカンパニー“akippa”の躍進が続いています。予約サイトを利用する為の会員登録者は昨年末に100万人を突破し、2019年度中には200万人も視野に入るかも知れません。また予約できる駐車場“か所数”(車室数ではなく)も2万5千を越えていて、これは業界最大であると言われています。

その為に大手企業もその内容に期待して、すでに24億円を越える資金調達を確保もしていて、同社にとっては順風満帆であることは間違いはありません。勢いをかって同社はMaaS事業への飛躍を発表していて、期待は膨らむ一方に見えます。

駐車場新聞でも同社に対する期待は高く、これまで積極的に紹介をしてきましたが、来年度は少し引いて数値を検証する必要を感じています。

変わらない事業業績の赤字の放置問題

ここに来て、そんなakippaの先行きに疑問の声が高まってきています。その最たるものは、同社の本業である“駐車場のシェアリングサービス”自体が、赤字体質から一向に脱することができないことにあります。
これについてはこれまで、ベンチャー企業の持つ特殊事情があると言われてきました。通常ベンチャー企業は最初、赤字が続いたとしても、そのビジネスモデルのファクターが特別なものであるから、巨額の資金調達が順調であれば、比較的遠くない先に黒字転換するものだと考えられていて、特に問題となるようなことはありません。

ベンチャー企業とはそのようなものだと、これまでは言われ続けてきたからです。

しかしakippaの駐車場シェアリングサービスは何年を経ても、赤字が一向に解消する気配は感じられません。特に本年度は会員数も提供箇所数も飛躍的に増えているにも関わらず、これまでと同じような額の赤字が続いていては、さすがにakippaの事業モデル自体に何か問題があるのかも知れないと思われても仕方がないかも知れません。

事業改革への意欲のなさ問題

2つめに感じられるのが、駐車場のシェアリングサービスについて“問題改善”があまり見られないという点です。akippaは本年度シェアゲートという画期的なゲート式駐車場対応のシステムを発表しました。これについては“世界初”との言葉が躍っているのですが、世界全体が同じようなコインパーキングの環境にあるのならば別ですが、日本だけは特殊な環境にあるのですから、これなどは多少はしゃぎすぎの感があります。

しかしakippaの予約サイトの使いやすさや会員数の多さは群を抜いていますから、それはリーディングカンパニーとして胸を張ることができるでしょうが、同社の大きな問題は、“本当に利用者の利便性が高まるための改善努力がまったく見られない”ことにあります。

akippaの予約サイトを見れば一目瞭然ですが、akippaに登録されている駐車スペースのほとんどは大都市の中心部か、イベント会場の周辺にあります。その他多くについては、あるにはあるのですがほとんど稼働していません。つまり超がつく一等地から、少し離れると、ほとんど利用できる場所がない状態だということです。

これが地方都市ともなれば県内全域の範囲で0~数か所の状態で、このような状況を放置し続けていては“駐車場シェアリングの予約サイトのリーディングカンパニー”などと言っても現実味に欠けます。問題なのは足りないのではなく、それを利用者のために問題解決しようとする企業努力が見られないということです。

あまりにご都合主義の数値発表

先程、“世界初の表現”が妥当かと言いましたが、そのほかにもakippaの数値発表には以前から、紛らわしかったり、かなり自前なものがあるという指摘はありました。

例えばakippaの規模の大きさを表すのに同社では“箇所数”を使っています。これは文字通り何カ所あるかということですが、一か所1台~2台の場所が多いakippaにしては、車室数では分が悪いので、こちらを使用しているのですが、逆に一カ所1台では、利用者には使い勝手は必ずしも良いわけではありません。“個所数”を発表するのであれば“車室数”もと言うのはもっともなことでしょう。

しかし同社の問題は現状の改善をする意思が希薄なところにあります。例えば先程の個所数にしても、実際は“使えなくなっている場所数”が急激に増えています。それはakippaに登録してみた、ものの、予約が一向になかったり、あっても1日の価格が安く設定されるので、一カ月運営してもほとんど報酬にならないので辞めてしまうケースです。本来であれば個々のためにアドバイスをしたりして少しでも収益をあげられるようにすべきなのでしょうが、akippaはその点はほとんど関与しません。

通常の場合それは「脱退」扱いとなりますが、akippaでは“脱退の手続きをしてもらう必要はなく、個々の管理サイトで「休止」状態にしていただけます”としています。実際には使えない車室があっても“休止”扱いにすることで、個所数は減らずに済むようになります。そして、akippaではこの“休止”の数は未発表ながら、かなりの数に及んでおり、こうして個所数を積立だけで発表している姿勢はご都合主義と言われても仕方がないでしょう。

“豊富すぎる資金調達が目を曇らせた”“予約サイトはすでに形骸化した”との指摘も

この状況にある業界筋の方からは
「akippaは予約サイトでリーダー的な位置を確保したが、そもそも当初から利益率やビジネスモデルに抜本的な欠陥があることを指摘する方もいました。最初のうちはakippa自身も危機感を持っていたのですが、大手企業からの巨額な資金調達があい次いだことで、浮ついてしまったのではないでしょうか。そんな中でカッコいいように聞こえながら実態が掴めないMaaS企業などと言い出して、シェアリング予約サイトなど、二の次になっているように思えます」
との指摘もあります。

本来のakippaの業務モデルであるシェアリングエコノミーとしての役目を果たす事よりも、ビジネスモデルで名を売って、資金調達を得る事に走ってしまって、本業をなおざりにしているという指摘があながち外れているとは言えません。

akippaへの期待と厳しい視線

akippaは業界最大手であり、且つ利用者登録も群を抜いていますから、そこが駐車場シェアリングエコノミー業界の発展のために、多少効率の悪い部分であっても、積極的に取り組むことをしなければ、その業界自体の衰退に直結することになります。同社が今のまま、赤字がでても意に関しないような体質を続ければ、残念ながら駐車場シェアリング業界自体をakippaが潰すことになってしまうかも知れません。

akippaでは企業としても社長もメディアの露出に熱心ですが、地に足をつけて行かないと“虻蜂取らず”にならなければと思います。今後は駐車場新聞でも、同社の動きには、これまでの期待度を低く修正して、少し厳しい視線で注視してゆきたいと思います。

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