駐車場新聞に比較的定期的にお寄せいただくのが“身障者駐車場でのトラブル”に関する問い合わせで、その内容も多岐に亘っています。
使ってよい人を決めていない「バリアフリー新法」
「専用駐車場に止めている横に、他の車が寄せて止めているので車椅子が入れない」という“物理的”なことから、「妊婦なので利用したら、見知らぬ人から暴言を吐かれた」などという“精神的”なものまであります。
通常の駐車スペースの基準は2.5mですが、身障者用は3.5mあり、車椅子などの利用を前提としています。しかし現実に身障者用スペースが数台並んでいるところなどでは、止め方によっては普通車1台のスペースがとれるので、むりやりねじ込んで止める車もあり、そうなれば車椅子は通れず、ドライバーが戻るのを数時間待つようなことが少なくないようです。
また、後者のように、聞く耳を持たず暴言を吐き続けられるという例も後を絶ちません。
当然、誰が止めてもよいのかというのには決まりがあるように思えますが、それらを定めた「バリアフリー新法」でも、駐車スペースのサイズや設置数には設置基準はあるのですが、“誰が使ってよいか”という点については、法的な定めがなく、それぞれの駐車場の管理者が決めています。
ですので、車椅子マークの正しい普及を目的としている日本障害者リハビリテーション協会では「障害のある方全般を指す。妊婦については該当しない」と考えているかと思えば、某ショッピングモールでは「当然、妊婦さんにもご利用いただけるよう指導している」というところもあります。
「利用証制度」でも新たな問題に発展
知人の話ですが、アメリカで足を骨折している友人とスーパーに行き、障害者専用駐車スペースを使っていたら、それは範囲に含まれないとして200ドル強の罰金を課せられたということがありました。こうした概念は特に諸外国に行った時などは、特に注意が必要です。
日本でもそのようなことがないように、佐賀県では「パーキングパーミット」という制度を立ち上げました。
これは、優先駐車場を必要とする人に事前に「利用証」を交付して、駐車する時に見えやすいところに表示する制度です。対象者については、高齢者や妊婦も含めて幅広く規定されていて、歩行困難な障害者だけでなく、怪我人、妊婦や難病指定を受けている方なども範疇にしています。現在では全国の三分の二近い府県でも導入していて、近いうちに法制化されることになると言われています。
しかし、それでも問題はあり、利用証を交付する範囲が広く設定されているので、これまで利用できていた障害者が利用できなくなることや、地域によって障害者と駐車場の数のばらつきがあり、調整できなくなることなどが懸念されています。もちろんそこには、利用証を錦の御旗として不正利用する輩は必ず発生することも考えられていて、ネットオークションで利用証が出品されることも想定の範囲となっています。
制度で解決はしない。しかし意識して良くして行こうが結論
ここでは、そのような制度に頼るのではなく、日本人が持っている思いやり、譲り合いの精神を取り戻そうなどと言う気はありません。そのようなことは机上の空論だからです。
先日の地方紙で「商業施設の障害者専用駐車スペースに止めた8か月の妊婦が、マナー違反だと詰め寄られ、髪を掴まれた」という記事がありました。そんな“異常な例外”に過剰反応する必要はありません。どのような制度を作り、どのようなルールを守ろうと呼びかけても、一定数、違反するものは後を絶たないものです。
寄せられたご意見でも、「車の障害者マークは、障害者用駐車場の利用の可否に関しては意味がない」という意見が多くみられます。つまり所詮はモラルの問題ということに帰結するものです。