“マンションの空き駐車場問題”などと言われても、直接関係のない人にとっては全く実感が伴わないことです。
それどころかマンション住まいで駐車場を借りている方にとっても、ほとんどの方が関心すら示さない事だと思います。
ある日、それが自分の身に跳ね返って来て、多額の出費を強いられるようになるまでは。
マンション維持管理費
通常のマンションでは賃貸で言う家賃とは別に「維持管理費」「修繕積立金」「駐車場費」などを収める必要があります。
「維持管理費」とは文字通りマンション全体の維持管理のために必要なものですから、直接なんらかの形で役にたっていることが実感できるものですが、「修繕積立金」は将来的に大規模な修繕…災害時、或いは老朽化に伴う建て替えなどがそうですが…に備えるものですから、実感など湧く事はありません。
それどころか近年、この積立金の横領や未払いが後を絶たず、社会問題化しています。
築40年。マンションの其処此処に構造的不具合が生じて危険な状態になっているにも関わらず、積立金の総額が数十万円しかなく、手をこまねいて…というケースです。
マンションの空き駐車場問題
しかし、これに輪をかけて深刻化する可能性があるのが「空き駐車場問題」。
例えば50棟のマンションの場合1割は多めに駐車スペースを確保する必要がありますが、不景気による車離れや高齢化に伴い、駐車場を利用する人が激減しています。
駐車場も維持管理が必要ですし、時期がくれば修繕だってしなければならない。
でも一定以上駐車場収入が減ってしまうと全体から持ち出しをしなければならない。
前述した建物の修繕費すらままならない状態で、これから10年~20年後にかけて「破産マンション」「倒壊危険マンション」が激増するというわけです。
マンションの駐車場は簡単に外部に貸し出せない
今は駐車場不足なのだから、それを貸し出せばよいのだと思うのですが、“売上げがでると全体が課税対象となる”とか“貸し出しの為の手間暇はだれが提供するのか”など問題は山積しています。
それに“マンションの住人以外が入ってくると気持ち悪い”と、自らの置かれた状況をまるで分かっていない意見が主流を占めることもあって、事態の解消は進みません。
マンション管理組合も努力するのですが、そもそも管理組合といっても所詮町内会長のようなもので、だいたいは順番にボランティアでするものですから、長期展望などできるわけもありません。
では外部の企業に委託する方法もありますが、これとて無料でできるものではなく、それ自体可能なマンションも限られています。
後手に回る政府の対応
このような事態が回復不可能なまでに混迷化して、ようやく行政が“少し”動き始め、国税庁の照会で課税関係が少し明確化されましたが、これも単に“マンション管理組合が駐車場事業者に運営を委託することに道筋をつけた”程度のことで、実効性には乏しいものではあります。
いずれは膨大な税金を投入した対策の導入となるのでしょうが、今ならそれほどの税金を使わなくても、解決の道筋をつけることは可能です。
しかし、“国滅びても、省残す”ことが可能と信じて疑わない官僚組織では期待ももてるはずもありません。
では、利用者である市民はどうかといえば、このような些末なことと高を括るのが関の山で、誰も関心を示すことすらありませんから、こちらも行き止まり状態です。
現在、この問題に対して問題意識が高い地域は、関東では神奈川県、関西では兵庫県だと実感します。
しかし双方の不動産会社などで聞くと、「今はそれで済むかも知れないが、あと3年もすれば都内などでも、この影響は強まってくるだろう。その時が怖い」という声が聞かれます。
さてこの「SILENT DISASTER」である「マンションの空き駐車場問題」。
官僚の無為無策と、利用者の無関心によって、これもまた、先送りされてしまうのでしょうか。