“殺す!?”とは少し大袈裟な表現ですが、マンションの管理組合などで機械式駐車場を運営している方は、その維持管理費の恐怖を実感しておられるかと思いますが、現在「駐車場余り問題」が深刻化していることをご存知でしょうか。
住民の高齢化や若者の車離れ、割安の周辺の駐車場などの影響でマンション駐車場の赤字が広がり、それが将来的にはマンション経営が破綻する危険が指摘されています。
ほとんどの機械式駐車場を導入しているマンションでは、駐車場の保守管理費用や交換費用などを独自口座では管理しておらず、管理費会計の収支・支出で計上しています。その為駐車場の借りてが減少するとメンテナンス費用が赤字となり、マンションの維持が困難になってきます。今回「駐車場新聞」では、そんな中の1軒から依頼を受け、どう処理すればよいのかを検証にでかけました。
本件のマンション機械式駐車場の状態
このマンションでは、やはり借り手が激減していて、1階部の専用使用権付の平置き駐車場が20台と機械式駐車場が85台設置されています。それが管理組合によると、現在は33台分のパレットが空いた状態だと言います。
もともと155cmという高さ制限もあり、利用者は減りこそすれ、増える要素はないという典型的なマンション駐車場でした。
さて、ここでは積立金会計を導入していて35%がそれにあてられており、残りの65%は管理費となり、メンテナンスの費用はこの中の管理費から支出するようになっています。これがこのマンションの概要です。
年間250万を超えるメンテナンス費用
私たちはとにかく、機械式駐車場のメンテナンス費用を算出することにしました。アバウトですが1パレット3000円強で年間6回。もちろんそのままではなく、もともとの数値からの再見積もりなども検討したうえで調整を加えることもおこないました。これら通常のメンテナンスのほかに、ベアリングやチェーンの交換費用、3年ごとの塗装費なども計算したところ、年間にメンテナンスにかかる費用は安く見積もっても250万円強となると判断しました。
役員の方から、どうすればよいと思いますかと問われた時、私たちの答えは「解体」でした。ここからは専門業者の仕事となります。近くの業者と連絡をとって機械式駐車場の解体と整地の費用を出してもらったところ約330万ということ。価格としてはほぼ相場でもあったので、その数字をお伝えしました。
以降の計画としては整地してできた平置き駐車場7台分を使用料収入に組み込み。それでも余ってくる空きスペースには駐車場シェアリングサービスを活用することでこれも収入に組み込むようにご提案しました。
マンション組合の緊急集会ででた結果はあっけないものでした
今後、不要となるメンテナンス費用を考えれば、工事費などすぐに元が取れることは、計算で明らかでした。しかしここで大きな問題が起こります。それはマンション特有の“集会”の問題です。
マンションでは通常、年2回の集会がありますが、うち1回は決定事項の報告会に近く、問題を提起して決定するまでに半年~1年を要します。つまりその間にも赤字は増え続けてゆきます。
もし意見が分かれるようなことがあれば、2年を過ぎても何も変わらないということも考えられますので、私たちはご依頼の受けたマンション組合の方々に“絶対に、緊急集会をおこなってもらうこと”を前提として了解してもらいました。
緊急集会はメンテナンス費用問題に絞って行われましたが、事前にレジメを配布していたこともあって、僅か15分で賛成多数で可決ということになり、多少の調整ののち、2週間後から工事に入りました。
工事もほぼそれくらいで終わり、今ではなにもなかったかのように静かな状況となり、計算通りに赤字は止まっています。この状況であれば駐車場メンテナンス費用で運営崩壊する危険はないと思います。
全国には同じようなマンションの機械式駐車場のリスクが転がっています。そしてその多くが、危機を乗り越えることができない可能性があります。これが“マンションの空き駐車場問題”で、おそらく1~2年後には深刻な悪影響が瀰漫することだと思います。そうならないためにも、早急な行動が必要なのではないかと思われます。