アパートやマンションの敷地内での違法行為である、いわゆる“マンション等敷地内の迷惑駐車”の実質被害は年と共に増加しています。植木ポッドやパイロンを置いても効果はありませんし、ゲートなどを設置しようとすると、とてつもない導入費用と維持管理費が必要となります。警察に頼もうにも「民事不介入」ですから頼りにすることはできません。ならばと、私有地なのだから不法侵入ではと考えますが、他人の敷地を勝手に使えば軽犯罪法に触れ、警察に届け出を出すことも可能ですが、あまりに軽い罪状ですのでとても起訴して云々ということにはならず、畢竟は泣き寝入りということになります。
迷惑、又は違法駐車するほうは、もし現場を押さえられても、法的なものを含めて対処方法がないことを知っているので、倫理観に訴えるくらいしか方法もありません。
防犯カメラの設置などハイテク対策も“事後対応”。“未然防止”にはならない
防犯カメラの設置はひとつの手です。もう少しお手軽に行うことができるのは、同じような効果を前提とした“センサー付きライト”でした。心理的にそれはそれなりに多少の効果はあります。
しかし、ある一定の割合いで迷惑駐車は減りますが、その効果は限定的なものであることは理解する必要があります。なぜなら残念ながら、若干違法駐車が減少はしますが、そのあとは、いくらカメラで違法駐車を突き止めたとしても、現場を押さえたとしても、それは“事後対応”にしかならず、所詮相手が開き直れば、手の打ちようがないのです。
防犯会社と提携して、カメラ等で迷惑駐車を観察しておいて、該当車以外が迷惑駐車をしたら、現場に駆け付けて、違法駐車をさせないようにするなどの手もありますが、その作業を外部に委託しても、また住人が交代であたるにしても、想定以上のコストがかかってきます。つまり“イタチごっこ”にならざるを得ず、やはりそれも得策ではありません。
そもそも空きスペースがあるのが問題であるのなら…
大変な効果というわけではありませんが、最近上手く運んだ例として、akippaのようなシェアリングサービスを活用する方法です。そこは首都圏に向かう私鉄の駅に近いマンションで60台の駐車場があるのですが、20数台の空きスペースがあり、駅近ということもあり、違法、迷惑駐車に困っていました。これまで、張り紙や警告文書で対応してきましたが、やはりイタチごっこ状態でした。やはりネックとなるのは20数台の空きスペースで、現場をみても、確かにこれほど空きスペースを放置している状態であれば、迷惑駐車されてしまうと思われる位置にあります。だからと言って、駐車場として他人に貸し出しなどすれば、“駐車場業”として収益事業となってしまうので、課税対象になります。
そこで何度か警察に家宅侵入の被害届を提出した上で、スペースをakippaに登録してもらいました。マンションの管理組合が積極的に外部使用を行おうというのではなく、「区分所有者に対する駐車場使用に付随して行う、単日単位のもので、しかもそれは家宅侵入を防ぐために、少しでも場所を埋める行為であると主張して、駐車場全体が収益事業には該当しないということを認めさせようという考えからでした。もともと迷惑駐車がなければ、このようなことをすることもないことも強調することも忘れませんでした。
akippaの看板を前に立てて、利用者には入庫する際、看板を移動してもらうように設定しました。その結果、迷惑駐車は一気に減りました。驚く事に、今まで迷惑駐車の常連だった車が、akippaの常連になりました。
要はその周辺には安い駐車場が少なかったのかも知れません。またマンション側も駐車場収益の落ち込みを、これでカバーすることができ、“マンションの駐車場の空き問題対策”に対応する道筋を得ることも可能になりました。
ただ全国に溢れるマンションと駐車場、迷惑駐車の問題は諸事情があり、この例のように、上手くゆく性格のものは逆に珍しいと言えます。ここでは、迷惑駐車を例にあげましたが、そもそもマンションの空き駐車場が事の発端でもあり、これ自体がマンション住民に巨額の負担金を課することになる例が、今後爆発的に増えてきます。
また、それほど逼迫した事態であるにもかかわらず、マンション側が、ここのようにひとつの決断を“1年以内に決定”することすら、簡単ではないのが実情です。しかしその事の深刻さに気が付いた時には、ことは益々複雑化し、解消不可能となり、莫大な費用負担に繋がることに気がついている人は、果たしてどれくらいいるのか。気づいた時にはもう手遅れと言う意味では、これも立派な“サイレント・マター”と言うべきでしょう。