当サイトには様々なご意見が送られてきます。通常は傾聴のみとさせていただく場合もあるのですが、今回類似のご意見がありましたので、注意を喚起する意味で、いただいたメールでのご意見のやり取りを事例としてご紹介いたします。テーマは駐車場内の「看板トラブル」です。
いただきましたメールをご紹介します。※文面について掲載許可は頂いています。
朝、パン店の駐車場に止める際、フェンスがドア側にあるためドアノブがぶつからないよう少し車を前に出し、確認してからドアを開けたところドアガラスが上にあった看板(少し剥がれて反り返っていた部分)にぶつかってしまいました。
幸い傷というほどのこともなくそれはよかったのですが、看板の位置に問題があると思い、パン店に伝えたところ「これまでもそういうことがあって管理会社に言っても対応できない」との返事で困っているとのこと。たまたま隣のビルに管理会社〇〇〇〇があったため立ち寄り伝えたところ「止めるときに気をつけてください」というばかりで、善処はともかく検討する気がないのはもちろんのこと、つべこべ言うなと言わんばかりの横柄な態度でした。
フェンスは気をつけたのにその上にある看板(しかも古くなり原型ではない)まで気をつけなければいけないこと、しかも管理会社の対応は「場内での事故等一切責任なし」と明記されていたら面積なのでしょうか?管理会社の対応に納得いかないためメールしました。
最初、パン屋さんが借りている物件の駐車場のことと間違って解釈をしたため、「それは借りているパン屋さんが、管理会社まかせにしないで監理する必要があり、契約書にも明記されているはず。管理会社(提供者)側の利益を守るためにも認められる」とお答えしたのですが、「看板はパン店のものではなく(パン店の名は何一つ出ていませんし、寄り合いの月極駐車場です)駐車場名と管理会社名(某大手不動産会社)その連絡先が書かれているものです」とのご訂正がありました。
実は当サイトにいただくご意見の中に、常時一定数、不動産会社の看板に関わるものがあります。特に不動産会社については、法的な手続きの後先は別として、利用者からのご意見を軽々に扱うことに対するご不満が多いこともあり、ご意見をいただいた方の了解をとり、記事にしました。
さて、駐車場新聞側からは以下のメール(挨拶部分等を削除)をお送りしました。
看板がそもそもパン屋さんとは関係ないということであれば話は全く違ってきます。ご説明します。
ご相談者様が立ち寄られた管理会社が横柄な対応をしたのには、実は以下のような理由があると考えられます。
法律では広告看板を出す場合は、それが営利目的であるか否かに関わらず、野外広告物の許可申請をおこなう必要があります。この申請は更新の必要がありますので、その際、安全点検をおこなって報告書を提出することが義務づけられています。
但し、それは看板の高さが4mを超えるものという規定で、地域にもよりますが自家用広告で、5㎡もしくは10㎡以下の看板については屋外広告物許可申請が必要ないのです。
つまり今回のご相談者様の抗議に対しても、そもそも安全点検の義務すらないのですから、それが”深刻な”事故にならない限り、放置しておいても管理会社にとっては痛くもかゆくもない。だからそのような態度にでるのです。
その地域の条例に照らされて、その看板が野外広告物の申請の必要な大きさであるのに放置しているのであれば、市のまちづくり課などに報告し、改善させることができます。
では申請の対象外の場合は、何か大きな事故にならない限り、打つ手は限られます。しかし、ご相談者様の言われるように、何かことがあった時には大変なことになります。管理会社は”その時は本社が対応すればよい”くらいの認識なのかもしれませんが、民法には「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定されています。さすがに本社は、その意味を理解していると思うので、本社に抗議する手はあります。
その後、ご相談者様からは再度、以下のご返事がありました。
相手側の事情についてはよく分かりました。規制がないこと、チェック機能がないことがそもそもの問題なのでしょうね。SNSとかで拡散していく方が早い解決につながるかもしれませんね。
そういう方法に普段疑問を持っている自分には抵抗がありますので、しないと思いますが、本社への苦情については考えてみます。
何より問題なのは私は個人的にこのパン店にはもう買いに行かないということです。こんなことで客を減らすことになるのは、パン店としても不本意でしょうが、もしかしたら他にもそういう人がいるかもしれませんね。
実は別のご相談者様からも「台風が近づいている日にコインパーキングの看板によって怪我を負ったが、業者は不可抗力だと言われたが、取り付けなど杜撰だったので、方法はないか」というご意見も寄せられていました。
法律の見地から見ると、現状直接、法に抵触するものでないのなら、何らかの被害がでるまでは対処の必要はないという立場に立つのだと思います。しかしいくら“駐車場内で起こったことについて一切責任を負いません”と看板に書いてあったとしても、そのようなことは関係なく管理責任は負うことになります。状況によっては相殺されることはあっても、100%責任は回避できるものではありません。
私たちは法律以前に、倫理や常識という価値観の共有者として社会を形成しています。まして企業活動をしていて、利用者、消費者の方々があって生業が成り立っているのであれば、現場に至るまで、ご意見を軽率に扱うことなく、些細なことほど、迅速に対処するような姿勢をもっていただきたいと考えます。これは回りまわって自身の利益にも繋がります。
何かことがあってからでは、賠償では片づけられないことになることを軽視する轍を踏むことで多くの企業が生命を絶たれた過去を忘れないように。