akippa株式会社は昨年10月に業務提携したSOMPOホールディングス株式会社と共同で、利用した駐車場内での事故のうち、ユーザーの自動車保険の適用外となった場合に備えて、業界初の「駐車場シェア専用保険」を開発。2020年6月1日(月)の駐車場利用分から適用となることを発表しました。両社は「これによって、シェアリングサービスは、安心の時代に入った」としていて、事故やトラブル時の不安を取り除く方法の一つとして注目されています。
駐車場シェアリングサービスについては、利用者、提供者共に「事故やトラブル時の対応が不安」という回答が最も多く、その不安を取り除くことは喫緊の課題でしたが、これまで同様の保険商品の開発については、その収益モデルが脆弱とされ実現に至りませんでした。
今回はakippaとSOMPOホールディングスが、そもそも業務提携関係にあり、単なる保険商品ではなく、広告効果として活用することを範疇に入れることで利益が合致したことが、その実現の原因だと言われます。さて肝心の保険内容について、現状の発表を元に検証してみると、総額としてはそれほど大きなものにはならないことが分かります。
「駐車場シェア専用保険」の具体的な中身は効果的?
実際に駐車場内で物損事故が起こった場合は、まずはakippaサービス利用規約に基づいて当事者同士での解決を原則としており、従来通りユーザーの加入する自動車保険にて対応をすることが前提になります。しかし、“万が一自動車保険が適用されない状況が発生した場合”に、“必要要件を満たせば”『駐車場シェア専用保険』が適用されます。保険の加入に際してはユーザー、オーナーの保険料の負担はありません。
では、具体的な補償範囲はというと、以下の3点になります。
① 物損害補償
ユーザーの行為によって駐車場を構成する壁やその他の設置物が損壊した場合の修理費の補償。
②傷害補償
ユーザーの行為によってオーナー自身がケガをした場合の治療費の補償。
③賠償責任補償
オーナーの過失によって他人の財物の損壊やケガさせてしまい、損害賠償責任を負担しなければならない場合の賠償金等の補償。
これによって駐車場のオーナーはユーザーに対して安心して駐車場を貸し出しすることができることになりますし、ユーザーは何らかの理由によって自身が加入する保険が適用できない場合の負担に対して、安心してakippaを利用することができます。
「保険が使える事故」って具体的にはどのようなことか
では、ここで言われる「保険が使える事故」には具体的には、どのようなケースが想定されているのかは知っておいて損はありません。
保険の種類によって違いはありますから、個々の確認は必要ですが、保険が使えない事故には一般的には以下の解釈となります。
➀飲酒運転、麻薬服用時の運転
ただ巻き込まれた被害者に対しての保険金については対人賠償や対物賠償は被害者保護の観点から、ドライバーが違法運転をしていた場合でも支払われます。
➁無免許運転のとき
対人賠償や対物賠償といった被害者に対する保険金は支払われます、搭乗者傷害保険などの自身のための保険金については支払われません。
➂父母・子供・配偶者が相手の事故
父母・子供・配偶者が相手の場合は適用外になります。例えば、親の車にぶつけてしまっても対物賠償で賠償金を支払うということはできません。
➃故意の事故
これは当然です。ただ故意の事故については、対人賠償、対物賠償についても支払われません。
自賠責保険については故意の事故については免責事由として認められていますが、被害者からの請求に対しては保険金が支払われます。この場合、保険金を支払った保険会社はその分を政府に請求し、政府は故意に事故を起こした者らに対してその分を請求します。かなり特殊な事故ですが、充分考えられることです。
その他、地震・噴火・津波による損害または傷害、戦争や内乱などの被害や台風・洪水・高潮による損害または傷害なども想定されていますが、これはあまり考慮しなくてもいいかと思います。あと、事故発生後60日以内に報告しなかった場合なども対象となる場合があります。
そのようにみてみると、“万が一自動車保険が適用されない状況が発生した場合”と、“必要要件を満たせば”という前提をクリアするのには結構ハードルがありますが、現実の駐車場シェアリング
サービスでは、あてはまるケースも少なくないので、確かに普及を考えれば大きな前進と言えます。
半面akippa サービス料で値上げ
ただ、6/1から追加されるのが、akippa サービス料。利用料に対して10%、ユーザーが負担することになります。
これによりこれまで1000円の駐車場が1100円になりますので、一部利用者は離れてしまうので、周辺駐車場の料金と釣り合いを取るためにはオーナーがさらなる値下げを行わなければならない場合も出てくるでしょう。
またサービス料はキャンセルした時に返金はされません。この点については利便性が損なわれ、安心と引き換えとはいえ、ここにきて利益主義にシフトするという部分で不信感は拭えないでしょう。
無論企業も存続する必要があるため、利益を上げるのは当然のこと。ただアナウンスとしてもかなり突然でなおかつ横暴に感じる部分はあります。
いずれにしてもこれが吉と出るか凶と出るか、今後の動向に注目が必要です。