駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa 株式会社(代表取締役社長 CEO:金谷元気)と駐車場シェアリングサービス「Smart Parking」やコインパーキング検索アプリ「パーキングライブラリ」を運営する株式会社シード(代表取締役: 吉川幸孝)が、駐車場シェアビジネスの進化を実現するために、競合を越えて業務提携をすることを発表しました。
ちょっと聞くだけでは、普通に業務提携するという事実を知るだけですし、少し経済に詳しい方ですと、どちらが傘下に入るのかというような、力関係を推測するものです。
しかし、この業務提携は少し様子が違うようで、分かり易く言えば“志しの高い事業スタイルの構築”と言えるようです。
まず、『akippa(アキッパ)』言うと、既に押しも押されもしない業界トップに躍り出たベンチャー企業として知られています。
そのビジネスモデルは、空いている月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などのスペースに、15分~1日単位でネット予約して駐車できるサービスです。
誰でも簡単に駐車場をシェアすることができますので、現在会員数が毎月10万~13万人単位で急増していて、予約駐車場サービス・駐車場シェアサービスでは、追従するものはありません。
対する、株式会社シードは、まだまだ規模は小さいですが、“山椒は小粒で…”ではありませんが、個性的なサービスを提供しています。
まず『Smart Parking(スマートパーキング)』。
駐車場オーナーと駐車場を使いたいユーザーのマッチングサービスなのは、akippaと同じですが、空き駐車スペースにシードが提供するIoT端末搭載のカラーコーンを設置することで、時間貸し駐車場として収益を得ることのできるシステムです。
実際の利用が多少手間な部分があり、ユーザーは専用アプリをダウンロードし、駐車場に置いてあるIoT端末とスマートフォンのBluetoothで現地認証をおこなう必要がありますが、一番の特徴は、実際の駐車時間に応じた利用が可能となることです。
もうひとつのサービスは『Parking Library(パーキングライブラリ)』で、これは格安コインパーキング検索無料アプリ(iOS、Android)です。
全国の5万件以上のコインパーキングを検索できるほか、AIが目的地周辺の駐車場の中から、距離や料金を勘案して、最適な駐車場を1~10位までランキングづけして提案してくれます。
確かによく比べると、凸と凹があって、完全に競合している部分はかなり少ないように思えます。しかしこの両社の業務提携が、高い志しによるものであるのは、同じような企業が雨後の筍のように出ては消えているのに、自社の利益だけを優先する姿勢から、このような動きがなかったことでも類推できます。
2018年に入ってからの駐車場シェアリング業界は、大手の参入や撤退が続く、変化の激しい業界となっています。特に準備万端で乗り込んできた楽天が撤退に追いやられたなど、シェアリングサービスが“力ずく”だけでは成り立たないことを意味しています。akippaとシードは一部競合でありながら、予約制で確実に駐車場を利用したいakippaユーザーと、IoT端末を利用して短時間手軽に駐車場を利用したいSmart Parkingには異なるユーザーニーズがあり、両社は駐車場シェアビジネスの拡大・進化の実現のために、自社の利益だけではなく、ユーザーの利便性向上とオーナーへの収益向上を優先することで、新しいビジネスモデルに取り組む点で、大きな進歩だと言えるでしょう。
因みに、発表された具体的な取り組み内容として、両社は以下の4点を発表しています。
1. Smart Parkingの駐車場をakippaに掲載
Smart Parkingのコーン設置駐車場の一部をakippa上に掲載し予約制を導入いたします。これによりakippaの掲載駐車場数が増え、akippaユーザーの利便性向上に繋がりますし、シードはakippaの90万人の会員をSmart Parkingが開拓した駐車場に送客することができます。
2. シード社のビーコーンをakippaにOEM提供
Smart Parkingの短時間利用に適したビーコーンを、OEM版としてakippaに提供。一部のakippa駐車場に設置します。akippa駐車場でもSmart Parkingの駐車場体験ができるようになり、当日利用のニーズにもこれまで以上に対応できるようになります。
3. akippaのサイトに、シード社の「パーキングライブラリ」から送客が可能に
シードの運営するコインパーキング検索アプリ「パーキングライブラリ」に、全てのakippa駐車場を掲載し、akippaへの送客を行います。akippaはパーキングライブラリを使う新規ユーザーへの認知拡大に繋がります。
4. 相互代理店として駐車場オーナーの異なるニーズに対応
異なるユーザーニーズに対応するだけでなく、駐車場オーナーに対してもニーズにあったサービスの提供を行います。営業活動先の駐車場が自社のサービスでは対応できない場合、Smart Parkingはakippaに、akippaはSmart Parkingに相互にオーナーを紹介しあい連携をしていきます。
すでにakippaは、シェアリングサービスの先にMaaS(Mobility as a Service)を視野に入れることを発表しています。
つまり単なる不動産屋的発想による収益稼ぎではなく、akippaのモビリティプラットフォーム構想は、最適なモビリティにより「人と人が会う」というビジョンを持っています。
そのため、カーシェアやシェアサイクルなどの他の関連サービスとの事業提携、利用者データの活用などを行い、ユーザーの出発地から目的地までの移動を支えるプラットフォームの構築を目指しています。
その点から見ても、今回の業務提携はakippa(株)とシード(株)のトップが、その理想の為に立場の強弱を乗り越えて相互利益を確保するのと併せて、シェアリングサービスを新しい次元に昇華させようとする理想で意志の疎通ができたというのだと考えられます。
従来の日本の企業ではとてもできるような業務提携ではないところに新たな時代が見えてくるように思えます。
技術的には、完全に準備は整っているそうですが、これがうまくゆけば、まだまだ新しい理想が実現されるかも知れません。